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【ある日見たもの】

一 双子町 Aさんは、学校の帰り道に蓋が開いたままのマンホールを見つけました。 中に人がいるように見えて、Aさんは覗き込んだ。 そしてAさんが何もないと思って立ち上がろうとしたら、家の鍵をその中に落としてしまい、手をつっこみました。 すると何かに手を引っ張られて、真っ暗なその中に落ちてしまいました。 気がつくといつもの町にいました。 でも、いつまでたっても空はいつも真っ赤で、Aさんはその町の血管にいるようで、不安になりました。 人はぱっと見誰も居ない。Aさんは「懐かしいところ行き」のチケットを持ったまま、とりあえず家の方向に向かって歩き出しました。 家のドアは開いていた。誰も居ない町に不安になって、喉の奥が焼けるような、そんな感じがした。 一滴だけAさんの下に雨が降った後、どこか、知らない場所から、いくらか懐かしい声がAさんの頭に入り込む。 「懐かしいところ行き。」 すると突然、Aさんがじろじろ見ていたマ〇クの手前に、バスが現れたのです。 二 一人旅 Aさんはなぜか助かるかもしれないと思って吸い寄せられるように飛び込んだ。 Aさんは、走っても走っても変わらない外の風景を、窓から身を乗り出してみていました。 昼間に見える白い月が、紅い雲の隙間からちらちらと淡く見える、そんな変わらない景色なのに、いつも新しく、鮮やかな感じがしました。 やがてその空は落ちて、重くて黒い夜がAさんも町も、覆い隠してしまうのでした。 それでも暗い、苦しげな夜には、光らない星がよく似合う。 光らないけれども、少しは温かい、月より冷たい星を窓越しに見た。 音のない車内に、車体の足音だけが鳴り響く。 隣の席を見れば、いかつい、怖い男がいるではありませんか。 その男は、Aさんに向かって、こんな変なことを聞いてくるのです。 「窓が三十個、鉄板が二枚、ノートが三冊あったら、君は何人いるだろう。」 あまりに変な質問に、少し怪しさを覚えたが、Aさんは当たり前のように「一人。」と答えた。 すると男は、「窓と鉄板は周りのものを反射するから、三十二人だよ。」と言った。 そして、「写った君がどんな形をしていても、写っているのは『君』なのだよ。」と続けた。 そのとき、改札口を白い人影が淋しく、さあっと通った。 「急にこんなこと聞いて、すまなかったね。」と男は立ち上がり、消えてしまいました。 Aさんが下を向いたとき、車体が一気に傾いた。 Aさんは外に投げ出された。 気がつくと、少年の声が呼んでいる。 もう夜は明けていました。 三 二日目 Aさんは、その少年に問いかけました。 「ここ、どこ…?」 涙目で見つめてくるAさんに耐えられず、少年は言葉を詰まらせた。 でも、じきに「自分も知らないんだ。ごめん。」と呟くように言った。 周りの建物たちも、「知らなあい。」といった感じで、二人を見下ろしました。 朝焼けの色が地面に反射して、ぼうぼう輝いていました。 少年は自販機から、二人分のウ〇ルチを出して、Aさんに分けてやりました。 そして、二人はバス停のベンチに座った。 「そうだ、ここから電波は繋がるのかなあ。」 隣りにあった電話ボックスで、少年は電話をかけてみた。が、誰も反応しない。 受話器から聞こえてくるのは砂嵐のようなザーッという音と、誰かが不気味な声でボソボソ何かを言っている、なんとも気持ちの悪い雑音だけでした。 二人はまた、バスに乗りました。 一番後ろの席に、Aさんが見た白い影が座っていました。 雨が降り始めた。「雨は好きか?」「うん。」「さみしいねえ…」「そうですね」 二人はこんな他愛もない会話を交わした。 ひどく寂しがる空を置いて。 そこで二人は、線香花火のように光って儚く消えていく光を見たのです。 そう、ほんの一瞬だけ。 それに重なるように、白い影がいるんですよ。 その頃町では、一人の人以外、二人がいなくなったことには誰も気づいていなかった。 AさんとBさんが永遠の夢を見たまま、帰ってこなかったことも、誰も知らずに。 ただ、一人の男以外は。

次へ続く

【夢幻セメタリ─】

(あとから思ったけど始まり方完全に火垂るの墓やんけ なんで書いた当時は見たことなかったのに被っとんねん 偶然ってこわい) 十三月三十二日 星が綺麗な今夜のこと、兄ちゃんは死んだ。 今日帰ってきたら置き手紙があってこう書いてあった。 〝ごめん、弟。帰ってきたら僕はいないかもしれない。〟 今日は、いつもでむかえてくれる兄ちゃんがいなかった。 そして、さっき、いなくなったことを知った。 からっぽの兄ちゃんの手首は、真っ赤だった。 なんでこうなったかは、「君にはまだ早い」と教えてもらえなかった。 でも俺にはわかる。その時はあれが兄ちゃんだとは知らなかったけど、見ちゃった。 帰るとき、駅の隣を通ったら色んな人の叫び声が聞こえた。 だから、少し覗いてみたら飛び込もうとする人を知らない女の人が抑えながら、「誰か!人が飛び込もうとしてる!」って言ってて、周りの人が焦ってるうちに女の人の力では止めきれず、その人に突き飛ばされて飛び込んでしまった。女の人は、その場に座り込んでどうして、どうしてと泣いていた。 その後は見てない。 けど、気づいた運転手が止めてくれたのか、少しの傷で済んだという。それでも、打ちどころが悪かった兄ちゃんは、存在しない國の住人になってしまった。どうして。兄ちゃんがいなければ僕は一人になっちゃうのに。うぅ、もう書きたくない。考えると気持ち悪い。気づいたときは吐いちゃったくらい。 実は僕らは廃屋がたくさん残った汚くて誰もいないほぼ無法地帯みたいな場所に住んでて、兄ちゃんはこの地区の近くにあるちっちゃな町の病院で働いてるんだ。早くこんなところから出るためにね。 家の隣はかなり昔に廃業した廃病院で、あの人はそれに何か引き寄せられるようなものがあったのかもしれない。 家の斜め後ろにある虫だらけの自販機が夜に光って怖い。 家の前はわりときれいだったけど。 あの人の机の上にはいくつものごめんなさいの字で埋め尽くされた紙があって、机にはこの世界は僕ひとりしかいなくて周りのもの、人間動物すべて仮想現実で人生という短い映画のスクリーンに映っているだけのただの絵だとか、この世は夢だとか、僕はただずっと暗闇の中にいて、僕たちが夢をたまに見てそれが終わってしばらく何もなくなってまた新しい夢を見始めるようにずっとずっと夢の中にいるんだとか。だったら悪夢だろうね。いつまでも終わらないとするなら、目覚めすらないからね。これは家の近くにある看板だよ。 そんなにここから出て行ってほしいんだね。 いいよ。あの人がいいって言ったらね。壊してうちに持ち帰りたかったけど ん?   来てる どうしよう ごめんね、またあとで。 部屋にあったもの ・錆びたカッター ・ところどころ黒く固まった縄(切れてる) ・破れた誰かの写真(兄ちゃんと…女の人?) 実は、少し前から様子がおかしかった。 いつもは優しいのに、急に性格が変わって何も言ってくれなくて、「僕があいつを殺したんだ…」なんて、重っ苦しいことをしょっちゅう言ってた。気づいてたのに何もしてあげれなかった僕は人殺し悪ガキだ。 それに五日ほど前に部屋にこもったまま出てこなくなって、仕事にもいかずに変な店ばっか行って。独り言では、あの人が死んだ、でもこんなときに何かあったのかと誰かにこれをもらってなんて口に瓶をつっこんで怖くて。 で、ある日部屋に鍵がかかってて、鍵穴からちょっと覗いてみたら中で兄ちゃんが倒れてて、呼んでも返事がなかったから心配でお母さんに相談したら今は放っといてあげてって言われた。 数日後になぜか部屋の鍵が外れてたけど、開けるなっていう紙が貼ってあって、入ってみたらまるでゴミ屋敷だった。 もう     はいないみたいで、部屋中の床によくわからない容器がたくさん転がってた。 そしてその日に帰ってきたら部屋でずっと泣いてて、まるで人間ではない何かに見えたよ。 血にまみれた手で目をこすってたから。 部屋をあさってたらサイトを開いたままのパソコンが見つかった。 そこにはちょっと前に撮られたっぽい動画が流れていた。 少し前に兄ちゃんがしばらく帰ってこなくて、大けがしたって聞いた時のだと思う。野次馬が撮影したのがつべに上がってた。内容は… 兄ちゃんと知らない会社員が殴り合ってる。 「お前やろ!お前がやったんやろ!」「違う!っこれは僕ではなくて…ああもう、早く帰りたいのに!」「やかましいわ若造!くたばれシャバ僧が!」 兄ちゃんは強そうな会社員に突き飛ばされて地面にたたきつけられた。 頭から血を流して倒れてる。投稿者と思われる野次馬が駆けつけて話しかけても反応がなく、胸が動いていないので撮影者が通報しながら心臓マッサージをした。会社員はいつの間にか逃亡していた。そのあと逮捕されたらしい。

あれ、兄ちゃんの日記だ…

『また、患者を死なせた。僕は、まだ生きられたはずのあの人の命を落として割ってしまった。 あの人が来たときから、大好きだった。 あいつぁー、こんな自分にも優しくしてくれて、いつも笑顔のいい人だった。なのに今日、あいつの命は砕け散った。いなくなる直前、 「ごめんねえセンセー、私が弱いからなんです、どうか私のことなんて気にせず生きてほしい。」って言って、僕は何もかも真っ白で。 僕のせいで一人消えた。 しかもそいつと付き合うことになってて、すごく仲が良かったのに。なんでなんだよ、運が悪いだけじゃないんだろ。返せよ。殺してもいいのか、あのときの自分。 こんなクソみたいな話、全部なかったことだよ。 ぜんぶぜんぶ、僕の中であったこと。もう過ぎていってしまったんだよ。ほら怖くない。 一人が怖い。怖い、怖いや。だからね、あの人も。 あれっ、この体は吐瀉物を飲んだの?くるしい。 気持ち悪い。まともに手を動かせない。喋れない。中身ぜーんぶ飛び出してくる。内臓まで吐き出してしまいそう。喉がヒリヒリしてきた。 イライラしてたから大事な大事なあの人の弟も殺した。はじめは抵抗してて、息絶えてきて倒れこんだとき「お兄さんなんで…」って重力に傾いた長い前髪から覗いた目で見つめてくるもんだからムカついたよ。 あまり血を散らすなよ。掃除が大変なんだよ。 注意したのにね、あーあ、ダラダラ垂れてきてるよ、刺したこめかみから光の向きを変えて膨らんだり戻ったり迷惑だなぁ。 ほらそうして安心僕のまくった腕をひっかいて抉るでしょう。 汚い血で僕の汚い手を汚さないでほしいんだよね。。 生臭くて最悪で最高。 そのまま血抜きもせず内臓も抜かずオキシドールにつけて部屋に飾る。ああいい観賞用標本だね。 今日はこれまでにして明日の楽しみを残しておこう。 そして僕はあの人の抜け殻さえ泣く泣く地下に運んだよ。 僕のせいでみんないなくなってしまったよ。 こんなこと書くんじゃなかった。なんか恥ずかしい。死刑にしてほしいよ。 お願いね、優秀なはずのサツ。 できれば、一度では吊れなくてかろうじて生き長らえてしまっていてね、そんでね、首がねじ切れそうになって白目剝きながら口から泡吐いて失神してるのを無理やり絞め殺して息の根を止めた後は脇に挟んで道路に放り投げて腐るまで放置で頼むよ。 僕はもうひとりぼっち。落ち着く。やっぱり明日の仕事は残しておいて今日飛び込もう。残された娯楽はあとでね。 いいよ何しても。内臓引きずり出しても頭潰しても首ちょん切って飛ばしても、シメてからバラバラにしてもなんでも好きなようにしてね。僕は自分が残酷に苦しめられるところが見たくて仕方がない。 自分の胆汁を浴びたいな!腹ぶっ潰して出てきた糞尿までぶっかけてくださいね。ああ、楽しみだ。 待ち遠しすぎて死んでしまいそうだよ。まだ殺らないのかよ。早くしてよ。もう待ちきれない。鼻が詰まってくる。 さあ…、 反省しないクズ人間に極刑を!』 さみしいよ。 …破って捨てたい。 ああもう離さないよ。今日秘密に刺してきたあの人の昔のすがたそっくりの子の血を搾り取るから。 もうそろそろ案内人が来る頃だと思うね。 捕まったってかまわないよ。一生独房暮らしでいいんだ僕なんてっ! へへへへへっへへへはははっはは はぁはぁ…? 第S気大好き大好き大好きさいすうD大好きでゃしすSFKDSくDじょあうぢあだFぢあうSFDS「あFD なんだDっでなんでんだんでDなんでなんでなんえんFDねんDねあねんDばかばかばかばかっばKGJBかあKばBかKばKDKばKLSKJBふぁLKJK えっと私、どこかの漫画で強制的に人生を切られた少女です。

悲しくてね、この辺で見つけた電車にとりあえず乗り込んだんです。 なんだか懐かしくて苦しいけどきれいで泣きたくなる夜空が見えたんです。 どうでもいいね、さっさとさっきあったことを書いていく。 駅前は人がいっぱいいるにもかかわらず虚ろでひとりぼっちの男の子が虚ろで真っ黒な目を半開きにして突っ立っていた。 「苦しい」とただ一言だけ、恋しい声で言って前から倒れてしまった。ゆっくりと半開きだった瞼が下がっていった。ちょっと気味が悪かったけど彼は少し見ているとドキドキしてくる。 へなへな力の抜けたその子を背負った。透けているのになぜかとても重かった。まあ全身の体重がかかるんだから当たり前か。 周りの人は私たちのことが全く見えていなくてぶつかってくるのをすり抜けて空いてる席に座った。 となりにいるあの子はひどく疲れているようで、私に寄りかかってぐったりしてた。 どこか青白い体には生気がなかった。この子はいきていないと私は気づいたよ。 しばらくして停車したら私とその子以外全員降車してしまって、私の体は動かなくなっていた。 どうしておろしてくれなかったの。ああ、透けているからだ。 その子は小さいころ私がけがしていると見ず知らずの私にも声をかけて手当をしてくれたお兄さんに似ていた。あれからちょうど十年たつからもう大きくなってた人だろうな。 最近自殺したらしい人なのかな。医療関係の仕事してそうだったの。 なぜか目を合わせられない。体に嫌がられてしまう。 でもねなんかね、私の膝の上に倒れてきて揺られてるその子がかわいくって、そっと抱き寄せて撫で繰り回してしまって、ああ恋だろうか、どうしてもかわいいので絞め殺してしまったのです。 こんな自分が異常だったのですよ。 彼の気づかぬうちに息の根を止めてしまったのです。あとからかわいそう、でも衝動が怖かった。 初めて人を害してしまって寂しかった。どうしてかな。 少し肉をかじったら泣けてきてしまった。吐きそう、吐きそう、くるしくって。 どうしてだろうか私は彼の腹をぐりぐりいじくりまわして中身を抉りだしてしまったの。解剖するように、ゆっくり、ぐちゃぐちゃに触った。 車内は真っ赤に染まった。あとはもうどうでもよくて、掃除する駅員が大変そうだなとか、迷惑かけたなんて、そんなことを窓の壁を見ながら思っていたわけで。 しばらくすると顔のない車掌が現れて、「失礼します。」と彼の両脇をつかんで外に運び出していった。滑り落ちた内臓ごと…ね。いたそーに。 そしてもう大人に戻っていた。幼い頃の彼の細い脚が恋しかった。外を見たら急に不安になった。その場でうずくまって涙を流さずに泣いた。 あの子にはもう会えないんでしょう。 私は強引に窓を割って名前の知らない駅に這い上がって外に逃げた。そこには大きな町があって、振り返ったらそこにあったはずの駅は消えていた。 もう何も言わない。 今日も僕はミスばっかりして、また怒られて、嫌な気持ちで帰り道を歩いていた。 疲れていた僕は、怪しげな居酒屋があったのを見て、無意識に入ってしまった。 でも、それがいけなかった。酔った僕はいつもと違う4番駅の3両車両に乗ったまま寝てしまった。 ガタンゴトン揺れるのが心地よくて自然に頷いてしまう。地面に意識も体重もぜんぶ吸い寄せられてしまうのだ。 一人だけ隣にいた女の子が危なそうな顔して少し肩をたたいてくれたのに目は開かないし体は動かない。 どれほど寝ていただろうか。 頬の辺りがべったりして、気づけば知らない、人のいない駅のホームで倒れていた。どうして誰も起こしてくれなかったのか。 乗客の目は、みんな真っ黒だったのを覚

…私は、知らない駅のホームで青年と出会った。
その人は、気づいてらここに来ていたらしく、ここがどこかわからないらしい。
そして彼は、「■■が見える」と、生気のない目で電車を指さしたあと、私に倒れ込んで動かなくなってしまった。
私は慌てて彼をゆすってみたけど、返事はない。
「死んだのではないか」と思うと、今日出会ったばかりなのになぜか心細くなって泣きたくなった。
自然と涙が彼の額に降ったとき、彼は目を開けてくれた。

「四番ホームから、夜町行きが発車します。」 聞き覚えのある、やかましい声で叩き起こされた。 気がつけば見知らぬ女の子が半泣きでこちらを覗き込んでいる。 どうやら気を失っていたみたいで、僕の額は彼女の心細さでぐっしょり濡れていた。 「あ、ごめん」と言いかけたとき、彼女は「死んじゃったかと思ったー!」と抱きついてきた。  あれが地獄行き電車だなんて知らずに乗ってしまった自分が心憎い。 でも、少し夢のようなものが見えた。 目を覚ます少し前、顔がない車掌らしき人に、脇を掴まれて改札前で降ろされた気がする。 最悪な日でしたねえ、今日は。  早く家に帰って、あの頃クリアできなかったMOTHERをやりたいよ。懐かしいの、できなくて。 そうそう、この頃現実世界という場所では、僕が線路に落ちて死んだことになってるのか知らんが、弟が泣き叫んでるのが目の裏に浮かんだ気がしてね。気のせいだと思いたいのだけれど、この街怖いよ。 でも、車内の窓から見た星空は、未だに僕の頭に焼き付いて忘れられない。 だって、あの日見た   の水滴みたいだったからね。 不安ですごく怖いのですよ、でも、ここからは一生離れたくない懐かしさと安心感。 これは不安と混ざっていいのか僕にもわからないよ。みんなにも来てほしいよ。なんて… こんなこといったらまずいよって自分に言ったらさ、心にちょっとバカにしたように笑われた。 電車に乗るのが、怖いよう。 ああそうだ、君、暇だったら僕の昔話聞いてくれないかな。 すまないね、君の人生の時間の何分かをムダにしているだろうよ。 でも、寂しいから頼むよ。ちょうっとだけで、いいからね。 僕はねえ、子供の頃はすごく怖がりで。一人でトイレに行けなかったんだよ。 情けないやつだなあ、って思うだろう? それでとうとう限界になっちゃって、怖くて、不安で、まるで今みたいな気持ちだった僕耐えきれず、情けなくも一人で「母ちゃーん!」ってね、叫んじゃって。 あんたこの年になってこんなことして。って怒られて、大泣きしたのを今でも覚えてるんです。 あとは、高校の卒業式のときだったかな、女子が好きなやつの第二ボタンをとるやつがあるだろう? あれで友達から、「お前はなよなよしてるから誰も取りに来ないだろ」って笑われたのはいい思い出。 結果はというと、そいつの予想通り、取ってもらえなかったんだけどね。 それとそれと、昔僕の友達の間では怖い話が流行ってて、そいつらの話によると、マンホールの中に町があってそこで白い影を見るらしいんだ。 君はみたことあるか?ないか。ちなみに、僕はあるよ。 青く冷たい夜はきれいですね。皆さん。そしてあの頃は怖かった。 母ちゃんは僕のことが嫌いだったのか、こっちに物を投げつけてきて、それを見て笑っていた。 倒れてぐったりしている僕の耳元で、「■■■■■」と言ってきて、苦しかった。 君にはわからないでしょう。こんな大事にされてない僕のことなんて、他人がなにか言ってるわなんて言ってさ、笑い事にして今日もどこかで幸せにして。誰にも聞こえないんだよね、僕の声は。 僕はこんなやつにいいように使われて、思い通りにならなかったら、どうして生まれてきた、なんて間違った正論を毎日のように聞かされて。こっちが耐えるのが嫌。 僕はただ、この地下のような場所で、普通に生きたいだけだった。なのにあいつは。 僕の生きる意味って、何でしょう。そんなものないんですよ。 君にやってもらいたいことがある。なに、すごく簡単なことだよ。 まず最初に、僕の心臓を握り潰して。 血がふきだしたら、その血をちょっと飲んで、あとはこんな僕の不味い血なんて全部捨ててしまったって、構わないよ。 それか、真っ白な僕の白衣を真っ赤にするのに使ってもいいよ。 そして僕の血管を引き抜いて、それで僕の首を絞めて殺してね。 できないかな?ごめんね。 まあ、気が弱すぎる君にはできないね。君に頼んだ僕がバカだったよ。 シッケイ、そろそろ逝く時間なのでこの辺で。さよならさよなら。 でも僕が落ちようとしたら、君が急に線路の石っころを持って、それを僕の左胸に勢いよくつきさしてきた。血が飛ぶ。それで、僕の心臓を抉り出してくれたっけねえ。 人間、心臓取ってもしばらく生きるんだよ。知ってた? ほんで、君は「これでいいでしょっ」と、座り込む僕の目の前でその赤黒い心臓を、「パァン」と握りつぶしてみせた。握りはじめのぽと、と垂れる、滲み出るそれの音が大好きだ。 そして、破裂した心臓の中からどす黒い血が四方八方に飛び散った。いい気分だ。 そして君はその冷たい心臓を少し舐めて、僕の額に投げつけた。まるで殺人をしたかのような色っ気になってしまった、僕は。 そしてソレは「ベチャ」と呟いて僕の足元に転がった。その次に君は僕の太い血管を引き抜いて、僕の首を絞め始めた。 現実でやろうと思えばできないかもしれないね、だが、それはカンケイない話だ。 なにせここは現実じゃないから。 生ぬるい、青い血管が僕の首にこびりつく。ああ、気持ちいい。 自分の中で自分が壊れていく、この感覚がとても大好きなのだよ。 しばらくすると、苦しく、意識が飛んできた。やった、やったね。これで終われる。 僕は最期に、ありがとうって、君の肩に手を乗せた。君は少し笑った。 そして僕のその生温かい青白い手は、どた、と独り言を言って地面に叩きつけられて、そして君は何かを確かめるように力の抜けた僕の手を触って、すっかり動かなくなった僕の体を線路に投げ捨てた。そして僕はそれを見下ろしてた。高速で過ぎ去った終電に、僕は砕かれて散らばった。 君は迷惑そうにそれを見て、ぱっぱと手を払って消えた。こんな最低な僕をぐちゃぐちゃにしてくれた、君は…君は、消えた。 そして、真っ赤に染まる駅。全部大好きなんだよ。ま、さっき君が殺してくれなくても、どうせ僕はあの塊に潰されてるつもりだったのだから、何をしても僕は終わってたのだけれど。 こんな話、聞きたくなかっただろう。別に、いいよ。 僕は何も怖くないし、恥ずかしくもないからね。 …ってなわけで、僕は知らない街に迷い込んだ。 あのとき僕の心臓を握りつぶしてくれた女の子は、姉がいないと泣いている。もうすぐ日が落ちるところで姉と合流した。 どうやらこの街は入り口も出口もなく、歩いても 歩いても特定の道をループするだけらしい。その子の姉から聞いた。 とりあえず、人が住んでないのか、鍵のかかってない家に住むことにした。 次の日、一人の少女とどこか出会ったことのある、僕に顔の似た幼い少年が家の扉を叩いてきた。 少女「あの、だれかいますか。」少年「おにぃちゃ〜ん…」すぐに家に入れてあげた。 少年ははじめ、僕を見るなり「兄ちゃん!」と抱きついてきた。 懐かしい匂いがしたような気がした。 少女の話をきくことにした。 「あの私、死んだと思ったらこの街にいたんです。」「それは、それは。」「あなた、生きてるのね?」「そうなんですよ。」僕は、これまであったことを話した。「そっか…大変だったね。」「ごめんよ、僕、何言っても不安だろうし、なんの力にもなれないや。」僕は目が真っ黒になった。 でも数日後、少女はおかしくなってしまった。 「あのね、私死んだら元の世界に戻れると思うの。」なんて言うんだ。 「やめときなよ。」当然、僕は止めた。 でもそれから一週間ぐらい経ったとき、少女の部屋から物凄い音がしてきた。 見に行ってみると、「あの子が…あの子がおかしくなっちゃったよー!」と少年が泣きついてきた。 少女は、何度も壁に頭をぶつけていた。 「君、何をしている!」もう誰にも止められない…ような気がした。 僕は反射的に、少女をおさえつけた。「苦しいだけだよ。」そう、やめるように言った。でも彼女はこんなことを口走る。「はなして!私をいじめたいの!?」その言葉に、僕は思わず力を抜いてしまった。またやるのではないかと怖かった。 でも少女は何もせず座り込んだ。 僕は彼女の髪が血で固まってたのが見えて、「ほら、これで拭きなよ。」と上着を脱いで渡した。少女は上着を受け取るやいなや、僕の腕に顔を伏せて泣き出した。「ごめんなさい」 僕は安心した。「どうして謝るね。君、何も悪いことしてないじゃないか。」少女の心で、袖が黒く湿った。「私、もうあんなことしない。」「頼むよ。」そして次の日、少女と一緒にいた少年がいなくなってしまう。「四人だけか…」 「あの子、戻ったのかなあ。」「そうだといいね。」けれど、なんだかやっぱりあの子はまだいるような気がした。「僕、あの子がいるか見てくる。君たちは危ないからね、ついてこなくていいからね。」「そんな、私も行かせてよ。」「だめだよ、こんなやつのために傷ついたりなんてしてほしくない。 「…わかった。」「じゃあ行ってくる。」「あっ…」「なんだ。」「あの…大丈夫?」「心配しすぎ。僕は大丈夫。」「気をつけて行って。傷一つでもつけて帰ってきたら怒るから。」「わかったよ…」とめようとする少女を押しのけて僕は外に出た。しばらく進んでいくと、一人の少年と出会った。少年は、僕に近づいてきた。「そこの兄さん、どうしたんです。」「小さい子、見なかった。」僕はその子に聞いてみた。少年はすぐ答えてくれた。「ああ、さっきそこの建物の角に、消えていったよ。」「ありがとう。」言ってみるとやはりあの子がいた。でもその前の建物に挟まれたあの子との間の道が、微妙な長さに落ちていて、飛び越えられるかわからない。その下にはただ、知らない色の空が広がっているだけ。僕は怖くて動けなかった。 「お兄ちゃん!」助けを求める少年の声だけが街に響く。頭が真っ白になった。だって、自分の声でこう言っているように聞こえたから。『ああ、僕はいつもこんな風だ。役立たずで、反省しないクズで、人間じゃない人間さん。好きな人を殺してもなんとも思えない。所詮は自分を殺すだけ。メーワクなんだ。消えてしまえばいい。』って。だぁれかがぁいってるんだぁ。 知らないうちに涙がぼろぼろ溢れてきて、恥ずかしさと怖さで「ごめんね!僕なんか忘れちゃって!君はもう助からないんだ、すまない!」とか言っちゃって、少年を見ずに走り出してしまったんだ。僕は家に帰って大泣きした。いい年した大人が、大声で。 「きっと今頃、元の世界に戻れてるよ…」双子の妹は僕の肩を叩いて慰めてくれた。そのうちに、泣き疲れて一瞬安心した僕は彼女の体に顔を埋めたまま眠った。そして、こんな夢を見た。 「お兄ちゃん、なんで助けてくれなかったの?ひどいよ。僕のことが嫌いなんだね。 …結局兄ちゃんは幸せで、僕はただ悲しいだけなんだよ。兄ちゃんは彼女もいたし、いつも楽しそうでさ。僕のことなんて気にしてなかった。いつもそうだよね。」この一言で、少年は下を向いて気持ちを落とした。「兄ちゃん幸せで、いいなあ。僕の気持ちなんて、だあれも知らないんだろうなぁ。」そう言われた途端、僕は目を覚ました。なぜか「ママ!」と叫んだ。それからというもの、あの子を見てない。 次の日、なんか頭がぼやっとした。なにか物騒なことをしてしまったらしい。よく覚えてないんだ…

僕はA。なんだか知らないけど、気づいたらここにいた。相方のB君と一緒に。 突然現れた怪しい男に、謎の汁をかけられた。 B君は僕を庇った。酷い…全身びしょ濡れだを大丈夫…?って、ちょ、どうした… B君はその汁で失明してしまったよ。そして、ふらふらと僕の肩に掴まった。 …嫌、この人怖いよ。僕は、B君の手を引いて逃げた。でも途中でつまづいて転んじゃった。Bくんは必死でこう言うんだ。「来るな…っ!こいつに触るんだったらまずは俺を殺してから…」B君は、怖くてまともにうごけない僕とは対照的だった。B君、目の前は見えないはずなのに「下がって。」と言ってまで僕を守ろうとした。命知らずだ。 「やめてよ、危な…」僕がそう言いかけたとき、その怪しい奴は僕目掛けて襲いかかってきた。もうだめかと思った。しかしその瞬間、そいつが左胸から涙を流して消えた。奥に立っていたのは、二十代くらいの男の人だ。片手に兇器を握っている。 僕は引き下がった。「立ってごらん、何もしないよ。」僕は半分注意しながら差し出された手に掴まって立ち上がった。男の人は、僕の手を見て声を出した。「どうしたんです、これは。」僕の手は、もう誰にも見せられないほど崩れていた。 僕は少し怖くなって、強がってみる。「大丈夫だから、見ないでよ。僕は怪しい人は許さないぞ。触らないでくれ。」その人は狂った。 「そろそろ黙ろうか、大人の怖さっていうのが、わかってない君たちみたいなガキは。」 あんなこと言わなければよかった。ああ、しまった。 その人は僕を地面に押さえつけて、抵抗する僕の手を振りほどいて手持ちの兇器で僕を滅多刺しにした。だんだん元気がなくなっていった。 意識が薄れていく中、「なかなか力尽きないなあ、この子。まーったく、世話の焼けるクソガキだね。」というあの人の声を聞き流して「やめてよぉ…」の一言を残して僕は気を失った。

…読めるか?ここからBの視点だ。ま、イヤだったら読むな。んで、Aはしばらくして目を開けてくれたんだ。そんで、通りかかったねぇちゃんがあの男を説教して、Aの額に手を当てた。Aの傷は嘘だった。一瞬にして消えた。

戻ったよ、僕はA。ここで地面に落ちてる   を見たら、こんなものが見えた。見えないB君がもう消えてしまいそうで、そこは誰かが見たのかもしれない、知らない色の場所だった。 「頼むよ〜…もっと心臓動かしてよ…」僕は状況がよくわからないけど、なんだか不安でB君の傍にいた。「もう無理だ。諦めろ。今までごめん。」急にこんなことを言われた。 「でも俺、この広い世界でお前に会えたのが、嬉しかった。お前の顔をもう俺は覚えてないけど…あと数秒だろうな…」 「あぁそうだ、最期に言っておくけどな…お前がずっと好きだったよ。お前は嫌いでも構わないよ。』僕は少し戸惑った。でもなぜかもう会えないような気がした。 「そんな…   ……ありがとう、な。」これしか言えなかった。もう少しなのに、なんて無力な。 僕はいつの間にか知らない場所にいる。すぐ近くの池の水の水面に映る僕は幼かった。 看板を見つけた。『ここは、君自身。君が壊れたら、ここも壊れる。いいね。』 進んでみると、なぜかさっき消えたはずの思い出せない、あの人がいた。 「俺のこと、覚えてるか?」「ごめんね、この頭では…」言う暇もなく、その人は悲しそうに俯いて消え去ってしまった。そしてさっきの看板にこんな文字が映された。「お前のことは、この俺だけが、知ってるよ。そう、これを書いたのは心の底で消えるのを待っているあの人。実はお前が、あの子を好きで俺には付き合いで仲良くしてたのを知ってる。それでよかったよ、恋できるって、いいね。俺はお前にしか、したことないや…」僕は、寂しくて、懐かしく、苦しい気分になって、倒れ込んだ。このまま目を閉じて、たどり着いた暗い中。このまま、僕もあの物語も消えた。最初から存在しなかったように。 誰の心からも忘れられてしまった。僕は誰なんだ? ぼくはひとりだ。

エンディング ハッピーエンドVERSION

ここから、ある日あったこと。空気の自分が知ってる。 「そうだ、みんな、たまには散歩してみない。」「いいね。」一同は、ただ適当に外を歩く。しばらく歩いていると、道の向こうに光るものが見えた。 四人は近づいた。「あっ、なにこれ!」周りがぼんやりして、気づいたらいつもの駅のホームに四人、折り重なって倒れていた。 そこに通りかかった、いつぞやに消えた少年によく似た男子が、「ちょ、大丈夫ですか」と四人をゆすってみた。少年は、一度諦めかけたような顔を真っ赤にして、瞳孔を震わせた。「ん…」一人の青年が立ち上がって、他三人を叩き起こした。そのとき少年は思い出したように、「あ、お兄ちゃん!」とつぶやいた。「今は黙っておくんだな。」青年はそういうと、三人を連れて駅を出た。その三人のうち、二人の双子はまっすぐ振り向かずに帰って行った。でも残った少女だけは「ごめん、私のわがままなんだけどね…」「何?」「あの、付き添って帰って欲しくて…」「いいよ。」二人は、何も話すことを思いつかなかった。ただ、互いの生温かい手を握って帰り道の方へ行く。「今までありがとう。」少女の家の前に着いた。 でも、少女はなかなか家に入らなかった。「どうしたの?君、家族が待ってると思うよ。」「あのね、私…」「何?なんでもいいよ、言ってごらん。」「あ…の…す…いや、やっぱりいいよ。」 「へえ、じゃ、さよなら。」青年が帰ろうと振り返った。でもまた、「あ…やっぱり…あっ…ううん、何でもない。」「面白い子だね。じゃあね、また逢う日まで。」青年は最後に少女の頭をなでて帰った。夕焼け空が、きれいだった。 家に帰ると青年は正気に戻ったように薬と汚物のこびりついた部屋を片付けた。頭でもぶつけたのかという具合に。どうやら青年たちが死んだという記憶は全人類から消えているそうだ。…彼の弟以外の全人類の。 次の日、青年はほかの三人を家に呼んだ。何をするわけでもなく、なんとなく。もちろん、同じ家の弟とは一緒だ。ほかの家族には内緒にした。 双子たちは談笑しながらじゃれあっているが、一人の少女だけは酔っぱらって寝落ちした青年の背中を優しくさすり続けた。 酔いつぶれている彼と同じほど顔を赤くして、まるでどこかで出会った子供の世話をするように。 そのうち、双子が大きな声で「じゃあね!」と挨拶をした。 少女ははっとして、双子に向かって「しーっ」と口元に人差し指を当てた。 双子は申し訳なさそうに帰っていった。 弟が自室に帰って行ってここぞと思った少女は、膝の上で横になる青年を起きないようにそっと膝から降ろして、抱きついた。 紙を落とすような音がしたとき、青年が目を一瞬ぱちくりさせたので恥ずかしくなって走って家に帰った。ただ少し起きかけただけの青年は起きたころには抱きつかれたことなんて覚えてないはずなのに。 「んん…あれっ、みんなは…帰ったのか。」そう言いながら体を起こすと、部屋にはもう青年以外誰もいなくなっていた。 足元には少女が抱きついたときに落としていった手紙が落ちてた。「すきだよ。」恥ずかしくて、くしゃくしゃにしてしまった。 七年前、「いいことしたからこれやるよ」と青年から弟に渡したポイントカード、帰ってきてくれてありがとうとくしゃくしゃに色あせて渡されたある日の夜。 いつぞやに忘れられた少年は、消えたあの子の隣で幸せそうにとまったよ。

エンディング バッドエンドVERSION(ごめん、青年たちがABCになってるごめん)

AさんとBさんとCさんは、道に迷ってしまった。ひとり、あの少女をおいて。 大雨が降り始めた。 三人は、水道管の錆びた家に逃げ込んだ。 Bさん「そんなぁ…」 Aさんは、窓の外を悲しそうに見つめるBさんの肩に手を置いた。「なんとかなるよ、多分…」 Cさん「ただの雨だよ。そのうち止むっしょ」 Bさん「そうだ!ちょっと待っててね」 みんなを元気づけようとしてとりあえず外に出ようとしたBさんがドアノブに手を掛ける。 そして手を引いた瞬間、圧でドアが壊れ、外の雨が川のように流れ込んできた。 「ガッシャン!!!」 流れてきたドアに押され、膝を強く打った。 音が危ないと思った二人が駆けつけた。まださほど雨は入ってきていない。 二人を安心させるために、Bさんは何事もなかったように膝を手で覆った。 Aさんは、Bさんを覗き込んだ。「膝、なんで隠してるの?」 Bさんは、Aさんの言葉が本当の優しさだと気づき、半泣きになった。それでも「大丈夫、大丈夫だから…」 雨の寂しさで砕かれた膝は、Aさんにも分かった。 しかし、Aさんはもうそのことを察して、可哀想だからと思い知らないふりをした。 Cさん「そっか」 本当は、とても心配していたが、彼女はまだこれから悲しい雨の足元に引き込まれてしまうことを知れやしない。 Aさん「ほら、ほら、入ってよ。危ないよ。痛いでしょう。」 BさんはAさんに付き添われて部屋に戻った。 Aさんは唐突に部屋を出た。「ごめんね、二人とも待っててね」 Cさん「なんか、心細いね」 Bさんは悲しくて黙り込んだ。 Cさん「なんだ、返事しないんだ。」 Bさん「う、うるさいよ…」 二人は喧嘩したまま壁と睨み合った。 「何も、なかった…」部屋に入ってきたAさんは気まずい空気に気がつく。 「えっ」 Cさん「思いつきにしても、私酷い事言っちゃったな…」 Aさん「無理に、仲直りしなくてもいいんだけど…」 B、C「ごめん」 二人同時に謝って、二人は一緒に微笑んだ。 でも、雨を移されたBさんの心は真っ暗になってしまい、膝を必死に隠しては涙をこらえる。 そんなBさんを見て二人はますます不安になった。 心配そうに床を見つめる二人のためにやっぱり何かしてあげたかったBさんは、何か探してくると言った。「やめときなよ」気が弱いAさんは、それくらいしか言えなかった。結局外にでかけていった。 なかなか帰ってこないBさんが心配すぎて、とうとうAさんは泣きそうになってしまった。 「大丈夫だから!」 Cさんは、本物の笑顔で、Aさんを励ました。 それなのにAさんは悲しくなって、豹変したAさんはCさんに怒鳴りつけた。 「もういいよ!」 助けるために言ったことだった。 「置いていかないでよ…」 Aさんは目に涙を溜めて振り向く。 「別に誰かに怒ってるわけじゃないさ!」 そのとき、Aさんの目から光る雫がこぼれ落ちた。 その宝石のような雫は、地面に当たって滲んだ。 そしてこの言葉は、Cさんの聞く彼の最後の言葉となった。 そして、腰のあたりまで浸かる雨を押し退けBさんを探した。Bさんは家から遠くない建物にもたれて誰かが来るのを待つように曇った表情をしていた。 なぜか汗は垂れ流し、こんな状況なのになぜか勝手に口角が上がってしまうAさんは、Bさんの手を掴んで引いた。 「大丈夫だから、ね。帰ろうね。」 「ありがとう」Bさんも、彼の手をしっかり握った。 そのとき、急に雨が激しくなり、互いの声も聞こえないはずなのに、Bさんは 「実は、優しいAさんが好きだったよ。 …OKじゃなくてもいいから…」 Aさんは、本当はBさんと両想いだったのに恥ずかしくて 「本当に、ごめんね…今は無理… 僕なんかよりいい人がいると思うからさぁ…」 と、断りでもないようなことを独り言のように言った。ほっぺたを真っ赤にして… 気がつけばもう雨の集まりはAさんの肩のあたりまで来ていた。背の小さいBさんは、 「息ができないよ…」と、必死に頭を出して言った。打ち付けるような雨に耐えながら。 それでも二人は絶対に手を離すことはない。 「ごめんね、何もできない…どうせ止まないんだから、どこへ逃げたってきっと僕らは助からないよ。最期くらい、笑ってようね。」 Bさん「でも、いつか違う部屋で助かるよね」 Aさん「ああ」 二人はもう帰れないと思っていた。しかし、家の前まで着いて玄関の段差に手をかけたその時、手が滑って落ちてしまった。 『ボチャン!』 そして、聞こえる彼の声の遅れが出た。 二人が雨の中に落ちると同時に、家の中に大量の水が入ってきた。 このままでは残されたCさんが溺れてしまうと思う間もなく二人は手をつないだまま沈んだ。 Aさん「離して会えなくなるなんて、絶対にないよ。」 Bさん「Aさん、私…」 せめて一緒にいてあげようとした。 Aさん「大丈夫、大丈夫だよ。 もうじき終わるから、安心して…」

ザーーーーッ…………

二人は世界からこの世から、忘れられた。 そして、沈んだ二人の手は終わってもなお離れなかった。 ???[二人とも、帰ってこないなぁ…] おまけ 青年たちが異世界に迷い込んでる間の話 青年が飛び込み自〇をしたとき、その駅で一人の少年が行方不明になった。 少年は十二歳くらいで一人っ子、普通な感じの髪型に少し幼いような、でも一昔前の男児の落ち着いた声をした少し変わり者の子だった。 その日はどこからか捕まえてきたイカを素手で握ってその辺をほっつき歩いていたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪しく思った通行人が、「なんでイカなんて持ってるの?」と聞いたところ、「捕まえてきたんだよ、そこの裏にある海で見つけたんだ。ほら、俺と半分こしよ。」と何もない、べつに奥に行っても海があるわけではない場所を指さしたと思ったら急に足を荒ぶらせて吸盤で噛みついて抵抗しているイカの足を引きちぎって、まだ元気に動くゲソを渡してきたらしい。 もちろん通行人は断った。「いや…いりませんけど。」それでも少年は、「いるでしょ。遠慮しなくていいんだよ?」と無理やりその人の手にイカの足を押し込むと「バイバイ!」と走って逃げてしまったらしい。 奇妙な笑い方をしながら行ってしまったらしい。 という証言がある。

もう、恥ずかしい。 「とびだしゃみえる」の横に貼ってあるポスター。 そこの横は、テレビ屋さんのショーウインドウみたいにモニターがたくさんついている。 一番右下のモニターから 時間というのはね 無限じゃないからさ、急いでくれないと 日が落ちる♪(ファ~) もうしわけーなさそうーにしたって♪急ぐ気は全然 ないでしょ♪ と流れる。 某有名YOUTUBERの曲だ。なんだか懐かしくて好きだった。 なんかさー、最近人がいないところに来ちゃって壁に堂々と自分のポスターが貼られてるんだよねー。 本当になんか、嫌だ。いいなんて言ってないのに。 名前くらい知ってるはずだよ。町でじろじろ見られるもん。 あ、手に持ってる皮みたいなのはなんだって? イカのエンペラだよ。腐っちゃったけどね。なんで持ってるのかはわかんない。ハエがついてきてうざったいけど捨てるのは嫌だから持ち歩いてる。 足はちぎって、うーん、三十代くらいのガタイの良くて小柄で、ドスの効いた声の男にあげたっけ。ああ、そうだった。 俺が「きれいなイカでしょ?」って見せたら「はい、そうですね。」って言って、差し出したら渋々拒否してきたあの人。まあ結局ちょっとイラついてたから手につっこんで逃げてきたんだけど。 これね、まだ動くんだよ、ほらすごいでしょ? あはははは。 俺がイカの頭を潰して遊んでたら医者がきて、しゃがみこんでこう言ってきた。「ちょっとこっちにおいで。」 「あ、イカの頭いる?」と聞いたらその藪医者は急に手首をつかんできて引き寄せられた。 「なぁんだよ、急に。痛いな。」俺がちょっと笑いながら言うと真面目な顔してメスを突き刺してきた。 痛い痛い痛い!!思わず叫んだ。 カラカラの涙がにじみ出てくるけどそいつに従う気なんてない。 でも、痛い!ねえやめて!って言ってみたけど聞いてくれない。 まだ、死にたくない。どうでもよくなってイカを投げ捨てた。絞めてあるのにちょっと動いてて気持ち悪い。 なんとか起き上がって逃げようとして這いずり回ってたら体中から血がぼたぼた垂れてきて中から壊れた。 ただの血の塊になってしまった。どうしてくれるの? 俺は一滴の涙を最期に気 『ビッシャァァ』

ガーっ、ピー、ザー… の…に…は・・・・・ 今日…ニュースは…行方 明…の……Dさん(12)が 失礼しました、先月から行方不明になっているDさんの遺体が、…グスン、 あ゛ぁ… イカエビ駅の奥の細いくぼみの間で、変わり果てた姿で発見されました。(ここ大事) 体には、数か所刺された跡が残っていたそうです。近くでイカの腐乱死体が見つかりました。 一回キスしてみたか…あ、失礼しました。

【人類最後の出会い】

誰も知らない時代のこと。 「植物なんてなくなれ」その、花粉症の人間の一言によって植物は都合よく枯れていきました。 とある兄弟は、自然の豊かな田舎町に住んでいました。 ですが、この頃植物がどんどん枯れていくので、不審に思っていました。 「最近、なんにも育たないねえ…」と弟が言うと、反抗期の兄は「は?うるさい。だからなんだよ」と言ってしまいました。 実は、いつも可愛がられている弟に嫉妬していました。 するとその言葉は弟の心に突き刺さり、弟は大雨みたく、わあわあ泣き出してしまいました。 「あーもー…泣くなって。」兄はイライラしながら無理やり泣き止ませようとしました。 そして出ました、いつもの必殺技。 弟はもう知らないと部屋を飛び出て、おっかあにこのことを話しました。 いつも通り、兄は説教を喰らった。 とうとう耐えかねた兄は、弟に聞きました。 「なんでいつも俺を悪者にするんだよ」 すると弟は、呆れた感じでこういった。 「わかってないなあ。だって兄ちゃん、されて嫌な事してきたら誰かに言いたくならないの?」 「…うるさいなー。」言い返す言葉がなくなった。 それでも弟はまだ、何かいうことは、という顔で兄を見つめました。 仕方なく、「お前は、泣けばどうにでもなると思ってるだろう?そんなんじゃ生きていけないよ。」 とバカにするように言った。弟は不貞腐れた。 「大嫌い」「別にいいよ」二人は喧嘩したまま、窓辺の花瓶を見つめていた。 もうすぐこれも枯れてしまったら、なんて二人はちっとも思ってないような素振りで。 きっとまだ、人も世界も、それのように枯れることも知らない無邪気な二人。 そんな景色を、夕日が照らした月曜日。 そしてとうとう、次の日にはその花瓶の花も枯れかけてきました。 「誰もいなくなっちゃったね…」「こんなの、二人だけで生きてたって悲しいよう。」 弟は、なにかをもうわかっていて諦めたように「息苦しくなってきたねえ。」 と、つぶやきました。 「そう?」兄は、弟を怖がらせないために、知らないふりをした。本当は、苦しかった。 そして兄は、もうじき息だってできなくなることをわかっていたので、最後に優しい自分と弟を会わせてやった。 「すまないねえ。今まで散々嫌いと言ってきたが、ただの嫉妬だよ。きっともうすぐ、終わる時も、本当は大好きだから…」 「遠回しに言わなくたって、よかったのに。」 そして弟は、空気が足りなく、青白く壊れた体のどこかをそっぽ向くようにした。 「大丈夫大丈夫。隠さなくてもわかってるよ。」 「兄ちゃんより先にいって、ごめんねえ… 苦しい、苦しい…」 「ううん。自分より先になんて、ありえないよ。そうしてもらえなきゃ寂しいから。」 そう言って兄は壊れたコンクリートをもって、外と中を往復して走る。 「■■■■■■■」「□□□□□□」 『苦しいね。息が。』 二人とも、必死に息を上げる、火曜日の最後のとき。 ″ENTER″のキーを、元気いっぱいにターンッと打つ、とある学者の調べもの。

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