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どうも、こんにちは。 私は空気というものでございます。 あのどこにでもある空気かって?そうです、いつも皆さんの事を見ているのですよ。 さて、本題ですが、近ごろおもしろい二人組の人間を見つけたのでね、紹介しようと思います。
どうでしょう、一人の名前を仮に山田さんと言いましょうか、そして片一方の人は松本さんということにでもしておきましょう。
二人はかなり前から一緒で、一人でいるところなど見たことが無いほどです。
しかし、いつも一緒に同じ道を通るほど仲の良かったふたりが、その日はいつもと様子が違っていたので見に行ってみたのです。 これは、これは。踏切を通り過ぎようとしたところに、いきなり穴が開いたように吸い込まれてしまったではないか。 吸い込まれた先は、いつもとなんら変わらない。でもおかしい。 だって、どんなに歩いても景色が変わらないんだもの。 ふつうは心細くなって慌てるでしょう。しかしふたりはこんな状況にもかかわらず、責任を擦り付け合うのです。これは流石の私でも、人間はこんなにも醜い生き物なのかと失笑するのであります。 でも、言い争っている暇はなく、もうすぐ夕日はふたりを飲み込もうと、必死に体を広げてふたりが気づくのを待っている。 ふたりもすぐに驚いて、ふたりバラバラに逃げ出した。 けれども夕日はお腹を空かせていますから、物凄い勢いでその世界ごと飲み込んでしまいました。 熱い熱い、夕日の中で、我先にと一人で抜け出そうとする松本を山田は手にかけた。 松本は、ぼんやりと思う。 (こんな風になってしまったのに、あいつはため息とつまらない文句をこぼすだけでさ。「はぁ、わかったよ。やはり私はその程度の存在としか思われていなかったのだね。残念だ。」) 山田は立て続けにこんなことを言ったね。「置いていくくらいならもう友達じゃないよ。さよなら、あなたはもう他人だ。」松本は、黙って聞くだけ。 歩いていくうち、山田はとても怖くなった。それは、体が破れそうなくらいに。 そしてふたりはどうなったと思う? 戻ってきたさ。踏切にいたはずのふたりが、それぞれの家に。偽物かもしれないのに。 いなくなっていたと思っていた親たちと、それを窓から見ていた夕日とお隣さんはこのことが一生頭から離れなくて、次の日、また次の日とずーっとあの風景を想い続けて10年、100年と記憶に苦しみ続ける破目になったんだよ… そう、永遠に、永遠にずっと。お前も同じようにしてやろう。
