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ヴィンテージポストボックス
医者がやってきて、僕の瞼を指でこじ開けた。「この子もう死んでるね」
オカンは僕の手を握ったまま静かに泣いた。
けれどもう僕は返事をすることも空に向かって笑うこともできない。
​心臓も肺も動かない。
苦しいのがやっと終わったという感じだった。
自分がなんで死んだのか理解できなかった。
気が付いたら体がなくなっていた。
さっきまであったはずの体はそこに置いてあるだけだ。
するとオカンは何を思ったか、僕の腕にそのまま噛みついた。
弱って豆腐みたいになった肌を思い切り噛みちぎって、右腕はもう全部貪り食ってしまった。
でももう止めるために話すなんてできない。抜け殻がそこにあるだけで、僕はもう体がない。
そうこうしてるうちに、妹が病院の入口から顔を出した。
正直無事だったことに驚いた。「お母さん!」妹は、走って入ってくる。




























そこから妹も加勢して、僕の体を食べ始めた。










これでお腹がいっぱいになるのなら、別に何とも思わなかった。
むしろ、これで家族と一緒になれると思えば嬉しかった。
しばらくする頃には、もうほとんど骨だけになっていた。
誰も何も言わなかった。そんな暇はなかった。
抜け殻は、ふたりに抱えられて近くの壕まで行った。
​それから腹を切り開かれて中身を食われた。
​僕がここにいるのはもうやめて、逝くことにするよ。さよなら母さん。
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